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第67回(1999年度第11回)ISM研究会

日時:02月06日(日曜日)
      14:30〜

場所:法政大学大学院棟(市谷)
      803教室

TEXT:『雇用不安』
      野村正實著
      岩波書店(岩波新書567),1998年7月

範囲:序章,第1〜3章

報告:城戸慎太郎(序章,第1章)
      今井祐之(第2,3章)

※本書は,雇用という点から日本経済の特質──他国経済とは異なる点──を
明らかにしようとしています。その際に,著者は,シュンペータリアンである
東畑精一さんの「全部雇用」論を復権させて,これを軸に旧体制の維持を図っ
ているようです。

 「全部雇用」とは,貧困の真っ只中での低失業率──という戦後日本の現状
──を説明するための枠組みのことです。これによると,同じく失業が存在し
ないと言っても,完全雇用下では各被雇用者は最大限の生産性を達成し,また
賃金に満足するのに対して,全部雇用下では各被雇用者は最大限の生産性を達
成しないし,また賃金に満足していないそうです。戦後日本の現状に即して言
うと,要するに農村が景気循環のバッファーになり,農村で実際には潜在的過
剰人口が存在しているのにも拘わらず,統計上では失業するべき人口が農村に
吸収されているという事実に,この議論は基づいていたそうです。

 さて,高度経済成長の疾風怒濤の中で,この「全部雇用」論は忘れ去られて
しまいました。そして,現今の不況下では,規制緩和による日本経済の復活が
叫ばれています。ところが,規制緩和が進むと,既存の雇用関係を破壊せざる
を得ません。これに対して,著者は規制緩和(高失業)と全部雇用(低失業)
とを対置させて,古い雇用関係(全部雇用)を維持・復活させながら,なおか
つ新しい社会(公正な社会)に向かって進むという戦略を提唱しています。

 今回の範囲について言うと,序章では,日本経済の現状と本書との関係が述
べられています。第1章では,日本の雇用構造の特質を,日本の失業率は(i)外
国との比較で低い;(ii)長期的には緩やかに上昇している;(iii)構造変化に
対して失業率の変動が弾力的ではない;(iv)求職意欲喪失者が多い──という
四点に纏めて,これを以下の議論の出発点にしようとしています。第2章で
は,日本の低失業率を巡る諸議論が,戦後期から高度経済成長期へという時系
列の中で,どのように変化していったのかということをサーベイしています。
第3章では,第2章で挙げられた諸議論の中で全部雇用論に着目し,その欠点を
克服し,リファインしようとしています。

 なお,今回は会場が法政大学大学院棟(市谷)に変更されます。どうかご注
意ください。

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 ISM研究会では,今後,取り挙げてほしい──あるいは取り挙げるべき──
テキストの候補を募集しています。いいものがありましたら,お教えくださ
い。
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