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伊藤さん,ISM研究会の皆さん,今井です。
伊藤さんの説明を読んで,どういう事態であるのか,俺の頭でもようやく解
ってきました。どうもありがとうございました。
戸籍上の父親である前夫Kさんではなく,なんで実父WさんがDNA鑑定を受け
なければならないのかという俺の疑問に対する答えを一言で言うと,要する
に,前夫Kさんが行方不明になってしまっているからだということですね。そ
こまで想像力が及びませんでした。総て納得しました。これさえ解れば,残っ
ていた細かい疑問も総て解消します。
要するに,こういうことですね(伊藤さんのメールと重複する部分が多いの
ですが,どうも自分の言葉にしないと,理解した気にならないので,どうかお
許しください)。──Jちゃんは既に前夫Kさんの戸籍に入っているから,外国
人母親の日本定住条件である実父による子供の認知が行われるためには,当然
に,前夫KさんとJちゃんとの親子関係不存在確認の訴えを起こさなければなら
ない。もし前夫KさんのDNA鑑定で親子関係不存在確認の立証がなされた(もち
ろん特別の事情がない限り,前夫Kさんは喜んでDNA鑑定を受けるでしょう)と
すれば,それでもう親子関係不存在確認の訴えは終了し,後は実父Wさんが任
意認知するだけでよかった(つまりDNA鑑定なんて受けなくてもよかった)。
ところが,前夫Kさんは行方不明になっている(これを知っていないと,もう
お話しになりません)から,前夫KさんのDNA鑑定による親子関係不存在確認の
立証は不可能である。そこで,実父Wさんの方でDNA鑑定が必要になった。つま
り,もし実父WさんとJちゃんとの間での親子関係“存在”が立証されれば,そ
の系論として,前夫KさんとJちゃんとの間で親子関係“不存在”も立証された
ことになる。もちろん,前夫KさんとJちゃんとの間での親子関係不存在が立証
されたからと言って,それで実父WさんとJちゃんとの間での法律上の親子関係
が創出されるわけではないから,この訴えが終わった後で,実父WさんはJちゃ
んのことを任意認知しなければならない(俺は,事態はもうこの時点に至って
いると想定していたのです)。ここで初めて,法務省通達に従って,母親Sさ
んの定住許可が下りるようになる。──こういうことですね。番組ではこの間
の事情がすっぽりと抜け落ちてしまって,どういう事態なのかさっぱり解りま
せんでした。
もうひとつ。番組ではJちゃんに戸籍(前夫Kさんの)があると言っていまし
たが,どういう事情で戸籍を取得したのかきちんと説明がありませんでした。
Jちゃんは,何も知らずに自分の子供だと思い込んでいたお人好しの前夫Kさん
によって胎児認知されたのではなく,出生時点では認知されておらず,一定年
齢まで無国籍状態であったが,その後に嫡出推定によって戸籍を取得したとい
うわけですね。
>認知だけでは日本国籍は
>取得できない。認知をしてもらえば、滞在許可は出る。
Jちゃんに即して言うと,これからが大変ですね。番組では,専ら母親Sさん
に焦点を当てて,取り敢えず母親Sさんの滞在許可が下りて総てオッケー,万
々歳ってな感じでした。けれども,もしあの番組がJちゃんに焦点を当ててい
たならば,全く異なったトーンにならざるを得なかったでしょうね。事実的に
家族であるだけではなく,法律的にも家族になりたいというのは解らなくもな
いですが,Jちゃんの将来を考えるとね…。